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HoloLens の視野角に関するマイクロソフト公式見解まとめ

2016/10/23 -> 2017/1/23 -> 2017/1/31 更新:

Microsoft HoloLens の視野角 (または視野、視覚) (Field of View (FOV)) については、公開技術情報 (Windows Holographic - Documentation) に詳細の記載はありません。本記事では、視野角に統一して紹介します。

 視野角について、マイクロソフト社員が言及している資料は、以下の 3 つの記事があります。

本記事では、それぞれの記事の詳細を紹介します。

アレックス・キップマン: ホログラム時代の未来にあるもの | TED Talk | TED.com (2016年2月の情報)

アレックス・キップマンが TED で公演した際に、司会者から受けた質問の通して答えた下記内容です。

 

www.ted.com

14:47(ヘレン・ウォルターズ) どうもありがとう いくつか質問があります

14:49(アレックス) どうぞ

14:51(ヘレン) メディアで論じられて いることでもあり ストレートに聞くので ストレートに答えてください デモと実際の製品の 違いについて いろいろ言われています 視野の問題です 今のは製品を買った人が 実際に体験できるものなんですか?

15:07(アレックス) いい質問ですね それは この1年の間 私たちが メディアからよく 受けてきた質問ですが 調べれば 私がそれには答えて いないのが分かるでしょう 意図的に 無視していたんです 聞くべきことが 違っているからですそれは私が誰かに初めて ホログラムを見せたときに 「そのテレビの大きさは何型?」 と聞くようなものなんです この製品に視角は ほとんど意味がなく 表示される 光の密度 ないしは 放射輝度を 問うべきなんです 角解像度はいくらか というのが より良い質問でしょう ご覧いただいたもの について言うと あのカメラに HoloLensを付けているので 誤魔化したくても 誤魔化しようがありません

15:50(ヘレン) でもカメラのレンズは 人の目とは違いますよね?

15:53(アレックス) あのカメラは 魚眼レンズを付けていて 人の目よりも 広い視野があります カメラの視点から出る 放射状の光の点を考えたとき 大切になるのは 容積あたりに どれだけの 光点があるかということです それは このHoloLensと あのHoloLensで同じです このカメラはずっと 広い範囲を見ています

米Microsoft Windows and Devices Group Technical Fellowのアレックス・キップマン氏の説明をまとめます。

  • (Q: 視野の問題を質問されることについて) 意図的に無視して回答を控えていた。
  • この製品に視角は ほとんど意味がなく表示される光の密度ないしは放射輝度を問うべき。角解像度はいくらかというのが、適切な考え方。
  • (Q: カメラに HoloLensを付けていて、人の目と見え方が違うことについて) カメラは 魚眼レンズを付けていて人の目よりも 広い視野がある。付けている HoloLens に違いはない

 「ホログラフィック」と本当に名乗っていいの? 米MS担当に聞く「HoloLens」命名の理由 (1/2) - ITmedia ニュース (2016年11月30日の情報)

視野角の狭さは意図したもの

 国内では、既に日本航空(JAL)がHoloLensを使った業務アプリケーションをパイロットの訓練で活用するなど、昨今のコンシューマー製品で盛り上がる「バーチャルリアリティー」と(VR)は異なるMRの特性を生かした利用が徐々に始まりつつある。
 そんな中で、既に利用したユーザーからは「HoloLensは視界上に3Dグラフィックを表示できる範囲が狭い」という指摘が挙げられている。VR HMDは没入感を向上させるために広い視野角を確保するのが課題となっているが、リードさんはこの件に関して「HoloLensの視野角は意図的なものである」と説明する。

 「VRは『仮想世界にいるんだ』ということを頭で納得する必要がある。そのためには広い視野角が必要だ。しかし、HoloLensは現実から引き離すデバイスではない。現実世界が見えるほうが重要。周囲が見えることで、装着したまま安全に歩き回れるよう意図している」(リードさん)

 さらに、視野角が狭い理由として描写するグラフィックの密度向上を挙げる。

 「HoloLensでは、広い視野角よりも表示される物体が本物のように見えること、細かい文字がしっかり読める高精細さを重視している。これはビジネス用途で最重視されるものだ。中央に視線を合わせたとき、他の場所に目のフォーカスは合わない。視野角を広げるよりも、表示されるグラフィックの密度を上げることが最優先される」(リードさん)
 HoloLensのようなMR HMDデバイスは、自動車のモデリングといったクリエイティブな作業や、機械メンテナンスの作業員をサポートするなど、ビジネスでの利用が多数提案されている。そういった用途では、見渡せる範囲よりも高品質な表示クオリティーが求められるという。

米Microsoft Windows & デバイスグループ ビジネス戦略担当ディレクターのベン・リード氏の説明をまとめます。

  • HoloLens の視野角の狭さは意図したもの
  • HoloLens は現実から引き離すデバイスではないため、現実世界が見えるほうが重要であり、安全に歩き回れるように視野角を意図して制限している。 
  • 広い視野角よりも物体が本物に見えること、細かい文字がしっかり読める高精細さを重視 (= 視野角を広げるよりも、表示されるグラフィックの密度を上げることが最優先される)
  • 中央に視線を合わせたとき、他の場所に目のフォーカスは合わない。

HoloLensの視野角はなぜ狭い? 米MS、アレックス・キップマン氏に聞く「Windows Holographic」(後編)   (2016年12月14日の情報)

 「一度あたりのピクセル数」で判断

──機器によってHolographicの解像度は違うのですね?

キップマン はい、大きく違います。ただ、この空間では「解像度」と考えない方がいいです。一般的にいう「解像度」と、3Dスペースでの解像度は大きく違うものです。角度あたりのピクセルで、そうした部分を考えるのが適切です。

「1度あたりのピクセル数」という考え方は、人の目の構造から来ています。Hololensは現状、もっとも解像度の高いものです。人の目が見分けられる限界、「1度あたり47ピクセル」です。

違うデバイスによって、違う解像度になります。1度あたり10ピクセルのものもあります。違う解像度のパネルを使いつつ、違う方法で、違う視野角で見ているので、違う解像度になるのです。そして、それぞれ違うGPUを使っていますし、それぞれ違うディスプレー解像度で動きます。視野角も違います。

ですから、それらをあわせて、自分の正面にどう見えるかを考える必要があります。視野角が広がると解像度が下がり、視野角が狭くなると解像度が上がります。

私はHololensを選びましたが、それは、視野にもっとたくさんのピクセルを集めたかったからです。なぜかというと、映像をクリアに見たかったからです。

Hololensを使った人は、皆映像が非常に鮮明であることに驚きます。それは「1度あたり47ピクセル」としたからです。同じ解像度のディスプレーを使って視野角120度のデバイスを作れば、ピクセルが見えてしまうことでしょう。それが、今の主要なVRデバイスの作り方です。

そのデバイスでゲームをするのであれば、それは良いトレードオフといえるでしょう。しかし、テキストを読んだりする目的には、あっていません。ぜひ、今のVR・HMDでテキストを読んでみてください。きっとできませんよ。8ポイントフォントを読めるのは、Hololensだけです。

これはトレードオフです。エコシステムを作り、その中でどういうチョイスをするかは消費者次第です。私は、Hololensを選びます。私のプロダクトですからね。エンタープライズ向けの用途でも、フルスクリーンのテキストを読むにも、Hololensのようなデバイスが適しているでしょう。一方、ゲームをするには、もっと大きい視野角が求められます。ピクセルについてはあまり気にしません。

──フォント表示はどうなりますか?

キップマン もちろんTrueTypeが使えます。しかし、TrueTypeはモニターでの表示のためにデザインされたものです。3Dでは、頭を動かすと、文字サブピクセルが見えてしまいます。これを解決する方法は今はありません。フォントをレンダリングする新しい技術が必要です。どちらにしろ、美しいフォントを表現するには、「一度あたりのドット数」がカギであることは間違いありません。

デバイスで異なる「視野角」「解像度」

この辺については、補足説明をしたい。マイクロソフトは、Windows HolographicおよびHololensで、「PCの一般的な用途を強く意識」している。Hololensは視野角が一般的なVRデバイスに比べ非常に狭い(50度程度しかない、と言われている)が、それは、目に入るピクセルの密度を上げ、文書や3Dモデル閲覧の際の「解像感」を重視しているから、というのはキップマン氏の説明だ。

一方、壇上で説明された3GlassesのWindows Holographicデバイスは、シースルーのMRデバイスではなく、VRと同じように、バーチャルワールドにワークスペースを作る。だから、視界全体を覆う、広い視野角(スペック上は110度)とされている。2880×1440ドット・704ppi・120Hzのハイエンドパネルを使い、ある程度の解像感が維持されているとは考えられるが、若干違う感覚のものになるだろう。

またキップマン氏は、「UWPアプリケーションではよりGPUの性能を必要とする。より多くのピクセルを、アプリケーション内に詰め込む必要があるからだ」とも話す。すなわちおそらくは、Windows Holographicで間口は相当に広がるものの、「一般的なPC的な仕事をするには、ハイスペックなHMDとパワフルなGPUが望ましい」ということになるのでは……と予想できる。

米Microsoft Windows and Devices Group Technical Fellowのアレックス・キップマン氏の説明をまとめます。

  •  一般的にいう「解像度」と、3Dスペースでの解像度は大きく違う。角度あたりのピクセル数で考えることが適切
  • 「1度あたりのピクセル数」という考え方は、人の目の構造から来ている。人の目が見分けられる限界が「1度あたり47ピクセル」であり、HoloLens も「1度あたり47ピクセル」であるため、Hololensの映像は非常に鮮明。8ポイントフォントを読めるのは、Hololensだけ。

  • HoloLens は角度あたりのピクセル数を意識して作られており、エンタープライズ向けの用途でも、フルスクリーンのテキストを読む場合に適している。一方、今の主要なVRデバイスは、ゲーム用途を想定しており大きな視野角が求められる。これはトレードオフ。
  • 3Dでは、頭を動かすと、文字サブピクセルが見えてしまい、これを解決する方法は今はない。フォントをレンダリングする新しいテクノロジーが必要で、美しいフォントを表現するには、「一度あたりのドット数」がカギ

 

月日が経つに連れて、視野角に関する質問への回答が具体的になってきています。以下、HoloLens の視野角について、各記事で具体的な数値や、定義、概念として言及された部分を要約します。 

HoloLens の視野角に関する具体的数値、定義、概念のまとめ

2D の解像度と 3D の解像度は違い、角度あたりのピクセル数またはドット数 (Angular resolution: 角解像度) が重要視される

高解像度の 2D ディスプレイは、dpi (dots per inch) ドット密度の単位が重要視される。例えば Retinaディスプレイ では、100〜200dpi程度であった従来の倍の解像度、401dpi (iPhone 6 Plus, 6s Plus, 7 Plus) または、326dpi で実現している。

HoloLens では 1 度あたり 47 ピクセルを実現している

"1度あたり 47 ピクセル" の角解像度は、人間の目で識別できる限界を超過している。

HoloLens では、TrueType で 8 ポイント フォントを読める

TrueType は、フォントの規格のひとつで、輪郭線の境界を曖昧にすることで滑らかな輪郭線を表示する表示形式。Mac OSやWindowsなどで標準的に使用されている。HoloLens は、ビジネス用途、エンタープライズ用途、フルスクリーンのテキストを読む用途を想定しており、表示される物体が本物のように見えること、細かい文字がしっかり読める高精細さを重視している。ゲーム用途を想定して作られたデバイスではなく、ゲーム用途では他の主要なVRデバイス (おそらく、HTC Vive、Oculus Rift、PSVR のこと) の方が適している。なぜならば、ゲーム用途では、視野角120度のデバイスが必要であるため、他の主要なVRデバイスでは視野角120度を確保する代わりに角度あたりのピクセル数は犠牲になっており、文字を表示させた場合、解像度が低く文字が美しく表示されない。現在の技術では、角解像度と視野角はトレードオフの関係性であり、HoloLens は "1度あたり 47 ピクセル" の角解像度を実現することを選んだ。

HoloLens の視野角は 50 度程度(※)

これは、マイクロソフトの公式見解ではないが、上記 PANORA VR 記事のフリーライター/ジャーナリストの西田宗千佳氏の表現(※)です。HoloLens の視野角の正確な値についての正式な情報はありませんので注意が必要ですが、HoloLens 使用者の立場としては最も気になる値かと思いますので記載します。なお、この値に補足すると視野角の横幅は 50 度程度かと思いますが、縦幅はより狭く 35 度程度かと思います。

 

以上が、現時点で確認できる HoloLens の視野角に関するマイクロソフト公式見解の情報です。以下に、上記公式見解を踏まえた HoloLens の視野角に対するよくある質問に対する見解を質疑応答形式で記載します。見解には、上記情報のほか様々な資料を読み込んで解釈した私個人の見解が含まれます。

HoloLens の視野角に関するよくある質問に対する個人的見解

Q: HoloLens の視野角は今後も 50 度程度なのだろうか

 上記公式見解でも説明されているように、現時点の技術では、視野角と角解像度はトレードオフの関係にあります。VR、MRデバイス関わらず、視野角は広ければ良い、角解像度は緻密なほど高性能になることは間違いありませんので、未来の技術で HoloLens の視野角が広がる可能性は十分あると思います。一方、主な VR デバイスに関しては、今後角解像度が緻密になる方向性だと思います。

Q: HoloLens の視野角の狭さは、一般ユーザーの期待に沿わないのではないか

 HoloLens は現在、開発者と企業を対象としていて、一般ユーザー向けに販売していません。一般消費者を対象としたデバイスではないということを意識する必要があります。

Q: HoloLens の視野角が狭いのに、値段が高い (30万以上) はなぜだろうか

 HoloLens は開発者と企業を対象としており、一般消費者向けではありません。すなわち、今後の HoloLens ないしは MR デバイスの将来性に対する開発キットを購入すると考えていただくと良いと思います。PS4 や Xbox、Nintendo Switch のソフトウェア開発には専用の開発キットが必要であり、一般消費者向けハードウェア本体より開発キットは高額です。HoloLens もそのような位置づけで考えていただくと、期待値を沿う購入ができると思います。

Q: HoloLens の視野角が狭いことは、MR (Mixed Reality: 複合現実) 技術の限界なのか

 視野角の制限は、Windows Holographics、または Mixed Reality 技術の制限や制約、限界を示すものではなく、現行の HoloLens デバイスの制限ですので、今後の技術改革により改善されるものと考えられます。

Q: HoloLens の視野角の制限は HoloLens アプリ開発時に影響するのか

 HoloLens の開発は主に Unity で行いますが、Unity エディター上で視野角の制限があるわけではないので、開発時に視野角の制限により開発がしにくくなるということはありません。しかしながら、HoloLens アプリ開発に関しては、後述するように視野角の制限を考慮したアプリ開発が求められます。

Q: HoloLens の視野角が狭いことによる、アプリ側の対応はどうしたらよいだろうか

 デバイスに応じた開発を行うという観点では、HoloLens も他のデバイスも変わりません。それぞれの特性を活かした開発を行う必要がありますが、HoloLens の視野角が狭いことによる対応としては、以下の点について注意してアプリ/ゲーム開発を行うことが有効です:

  • ユーザーの視点誘導を適切に行うこと
  • 視野角に収まらない大きなホログラムの使い方
  • 視野角の "枠" を意識させないホログラムの配置、操作性

HoloLens の Windows アプリ ストアにある Microsoft HoloLens | RoboRaid や Microsoft HoloLens | Young ConkerMicrosoft HoloLens | HoloTourMicrosoft HoloLens | Fragments は、HoloLens の視野角の制限を考慮した実装になっており、適切な視線誘導、ホログラムの大きさや配置する場所が体験できるので、HoloLens のアプリ/ゲーム開発の前に必ず体験し、開発者目線で UX を解釈することが大切です。

Q: HoloLens の特性に対して、向いているもの/向いていないものは何だろうか

HoloLens を使うという目的でアプリを開発することは有効ではありません。HoloLens は端末の持っている特性が特徴的で、かつ開発も容易であることから、今不自由なく使えているアプリ/ゲームをそのまま移植する傾向がありますが、単純移植は HoloLens の特性を活用できず、MR 体験の価値を低下させます。

向いているもの

  • 現在仕方なく 2D ディスプレイで開発しているもの
     例: 3D オブジェクト作成、3D 見取り図など
  • 費用、時間の面で削減できるもの
     例: 開発段階のバイクや車の模型など、常に新しい模型製作が求められ、短期間で使用が終わる場合は、3D プリンターで出力することと比較して有効です。

向いていないもの

  • 2D 表示を前提に作成されたものを 3D 表示すること
     例: 単純な株価チャートや Excel の 2D グラフなど
  • 広い視野角が前提な表示、操作性が求められるもの
     例: 360 度の没入感が必要なゲームなど。これに該当するものは VR デバイス向けに開発したほうが有効です。
  • 大人数で一度に見る必要がある展示物など
     例: 建物の模型など、複数の HoloLens でホログラムを共有する方法はありますが、用途によっては 3D プリンターで出力したほうが良いものがあります。

Q: HoloLens の視野角が狭いことを理由に HoloLens の価値が低くみられるが、どのように捉えたら良いだろうか

 視野角の制限は、HoloLens デバイスのみの制約でなく私達が初めて体験する事柄ではありません。

 例えば、メガネというデバイスがあります。そして、メガネが無いと生活ができないくらい強度近視/遠視の方がいます。彼女/彼にとっては、メガネで視力を補うことで視野角が確保できる状況です。彼女/彼は、メガネにより拡張された現実世界の情報にメリットを感じています。一方、メガネの範囲外の視野について、メガネという製品が不完全であると不満に感じたりはしません。また、メガネの視野角が狭いからという理由で、全視野角を覆うようなゴーグル型のメガネを掛けたりしません。なぜならば、メガネを掛けている方は、以下の方法で視野角の問題を解消できることを知っているからです:

  • 角度や対象物までの距離を変えることで、期待する景色を見ることができるから
  • 脳内補完により、はっきり見えていない部分の景色を推測できるから
  • 集中して見つめるときに、全視野角がくっきり見えている必要がないから

では、なぜ HoloLens の視野角の制限に違和感を覚えるのでしょうか。

 これは、HoloLens の視野角が、HoloLens のゴーグルよりも狭いためというのは大きな理由だと考えられます。メガネのレンズには様々な大きさがありますが、いずれもレンズの縁まで度が入っています。一方、HoloLens は、ゴーグルの中心部分のみにホログラムが表示される仕組みです。メガネと同じように HoloLens のゴーグル全体の視野に表示されるはずという事前の思い込みが、違和感を感じさせる理由になるのではないでしょうか。こう考えると、HoloLens は遠近両用レンズのようなもので、目的に応じてレンズの特定部分で視野角を確保する製品に近いかもしれません。

 別の観点からの話として、HoloLens は視野角外のオブジェクトが全く見えなくなるので、視野角外もぼんやりと見ることができるメガネとは違うという指摘があります。

 人間には物が全く見えなくなるような視野角の制限はないのでしょうか。人間の視野角は、人により差異がありますが片目水平方向で 90 ~ 100 度程度です。つまり、もともと人間の視野角には制限があり360度、背後を見ることはできません。しかし、私達は脳内補完により、既に見たことがある景色ならば、背後にある物体を推測することができるため違和感なく生活ができます。例えば今、あなたの視野にコーヒーの入ったマグカップが見えていなくても、あなたは不便に思いません。なぜならば、あなたはマグカップの位置を把握しており、"ここにあるだろう" という視線を移すことでマグカップを見つけることができるからです。

 現行の HoloLens の視野角には制限があります。しかし、一度、各ホログラムの配置場所や全体像を把握してしまえば視野角の制限によりホログラムの一部が見えてない場合であっても、ホログラムがある場所を明確に記憶できているので、"ここにあるだろう" という推測をもとに、視野を移動させることで期待通りのホログラムを表示することができます。

 自分自身の視野の制限に慣れてしまえば違和感を感じないように、HoloLens の視野角の制限に慣れてしまえば、違和感なく操作することができるようになります。

まとめ 

 私は、現行の HoloLens の視野角が現状で完璧なものであると思っていません。人間の元々の視野角が広ければ嬉しいことと同様に、HoloLens の視野角も広ければ広いほど望ましいことです。また、HoloLens が軽くなることや、そもそも何も装着しなくてもホログラムが見えることが、Mixed Reality 技術の最終到達地点として望ましい形と考えます。

 上述したように 現行の HoloLens の視野角は、現在におけるハードウェアの技術的制限であり、Windows Holographics、または Mixed Reality 技術の制限や制約、限界を示すものではありません。

 第1世代のデバイスがリリースされた HoloLens は、今後あらゆる点が改良されていくことが予想できます。Windows Holographics テクノロジーは、パートナー企業に展開されているため、今後様々な MR デバイスがリリースされることが予想されます。

 上記点から、私は HoloLens を含む Mixed Reality 技術の未来は明るく、10年後の未来に取り残されぬよう、今取り組むべき技術と考えています。