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XR で描く未来

概要

この記事では、XR とコミュニケーションの関連性、そして未来のコミュニケーションについて XR が担う事柄について紹介します。

はじめに: XR について

XR (AR:仮想現実, MR:複合現実, VR:仮想現実 等の総称) は、人類の新しいコミュニケーションの方法を生み出す可能性のある破壊的技術です。

Extended reality (XR) is a term referring to all real-and-virtual combined environments and human-machine interactions generated by computer technology and wearables. It includes representative forms such as augmented reality (AR), augmented virtuality (AV) and virtual reality (VR), and the areas interpolated among them. The levels of virtuality range from partially sensory inputs to immersive virtuality, also called VR.

背景: コミュニケーションの価値とは

あらゆる人間活動の目的は『他人とどのようにコミュニケーション*1を取るか』という一点に集約されると考えています。知識、信仰、芸術、道徳、法律、慣行、その他全ての組織的、個人的の活動に他者との交流は欠かすことができません。

これまでの人類が最も大切にしてきたコミュニケーション方法は、原始的でアナログな膝を突き合わせて対話する『Face to Face』コミュニケーションです。

デジタル技術が進化した現代においてもそれは変わりません。

1832年にシリングが電信機を発明してから、量子化された通信データをモールス符号、電報、電話、無線通信、ラジオ、FAX、テレビ、ポケットベル、携帯電話、パソコン通信、インターネットなど様々な技術で、『Face to Face』コミュニケーションの代替案として多くのデジタル コミュニケーション手段を生み出してきました。(参照: 通信技術の年表)

一日に何度も確認する電子メール、Twitter や Facebook、Instagram 等の SNSはもとより、Yahoo! ニュースや、NewsPicks 等でもコメント欄によるやり取りが活発です。ちょっとした合間にプレイするスマホのソシャゲも名前のとおりソーシャルな機能が存在します。

しかしながら、デジタル コミュニケーションでは物足りなさを感じる瞬間があります。

YouTube で聴いていた好きなアーティストのライブに行ったときの高揚感。
インターネットで知り合い意気投合した友人とオフ会で会うときの喜び。
リモート ワークでやり取りしていた同僚や取引先と会ったときに得られる信頼感。

いずれもアナログ コミュニケーションである『Face to Face』で得られる感情であり、デジタル コミュニケーションでは得られない感情です。

2017 年においても人類は『Face to Face』を最も価値のあるコミュニケーション方法だと認識しています。

アナログ コミュニケーションとデジタル コミュニケーションの違いは何でしょう?

それは、量子化されていないアナログ データの連続した情報の価値です。離散的な数値のやり取りとなるデジタル データと情報量の違いがあるためです。インターネット回線は全てのアナログ データを送受信できないため、アナログ コミュニケーションである『Face to Face』と比較してデータの欠落が生まれます。

音声に加えて表情もわかるテレビ電話でも、同様にデータ欠落があるため『Face to Face』コミュニケーションと比較して、相手の雰囲気であったり体調、気分といった感覚的情報を得ることができずにもどかしさを感じることがあります。

21世紀、我々はアナログ コミュニケーションである『Face to Face』より高価値のコミュニケーション手段を生み出す時ではないでしょうか?

『Face to Face』コミュニケーションは、アナログ データの連続した情報を得られるメリットの代わりとして、時間と場所に縛られるコミュニケーション手段です。

冒頭で紹介した XR は、デジタル コミュニケーションでありながら『Face to Face』のようなアナログ コミュニケーションに近づける、そして超えることができる可能性を秘めた技術です。

例えば、時間や空間に拘ること無く、また『Face to Face』と同じような感覚的な情報が得られる手段ができたとしたらどうでしょう。XR をインターフェイスとしてビッグデータAI を活用することで、過去の出来事、場所、人物と会話ができたり、または、未来の出来事、場所、人物を可視化することが実現できるかもしれません。

『時空を超える可能性がある』『人類の認知を拡張する可能性がある』ということです。

提案: コミュニケーションに破壊的イノベーションを

人類がこれまで渇望し積み重ねてきた他者とのコミュニケーション手段の中で、最も価値がある『Face to Face』を凌駕する新しいコミュニケーション手段が生まれた時、それはいわばコミュニケーションの技術的特異点 (シンギュラリティ) と呼称できるかもしれません。いえ、もしかしたら、今お持ちの XR デバイスが、2045年の未来から振り返ると新しい段階への道具、手段だったのかもしれません。

特異点に代表されるような技術の変化は、特異点に代表される(というのは不正確だが)ような変化の「内部」からでは全く認識できないと思う。ある水準から次の水準への転換は、新しい水準にある高い視点から、すなわち、そこに到達した後でしか見ることができない。 神経細胞との比較において、頭脳は特異点のようなものである。低い部分からは見えないし想像もできない。神経細胞の視点から見れば、脳へ通報するための少数の神経細胞から多数の神経細胞への活動は、神経細胞の集合による、ゆっくりとした連続的でなめらかな道程のように見えるだろう。そこには途絶の感覚、携挙の感覚はない。その不連続は逆方向に見たときにのみ知ることができる。

言語は文字と同様に、ある種の特異点である。しかし、その2つへ向かう行程は、その習得者には連続的であって感知できない。友人から聞いたおもしろい話を思い出した。十万年前に原始人たちが、たき火のまわりに座って最後の肉のかけらを口の中で噛みながら、喉の音でおしゃべりしていた。一人がこう言った。

「おい、みんな、俺たちは話しているぞ!」 「話している、ってどういうことだ?おまえ、その骨は食べ終わったのか?」 「俺たちは、お互いに話し合っている!言葉を使っているんだ。わからないのか?」 「また、あのぶどうの何とかを飲み過ぎたんだな。」 「今、俺たちがしていることだよ!」 「何だって?」

組織の次の段階が始まるとき、現在の段階にいる間は新しい段階を把握できない。なぜならば、その認識は新しい段階において起こるはずだからである。全世界的な文化が出現する中で、新しい段階への転換は実際に起こっているが、その変化の途中では認識できない。[中略]従って、私たちは次のようなことを予期することができる。今後数百年にわたって、生命が当たり前のように途切れることなく続いて、決して大変動はなく、その間ずっと新しいものが蓄積する。それはやがて私たちが、ある種の道具を手に入れたことに気づくまで続く。その道具を使って、何か新しい道具が存在することを認識し、さらに、その新しい道具はしばらく前にすでに出現していたことを認識するのである。

-- 「特異点はいつも近い」著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly ) 訳:堺屋七左衛門

まとめ: XR でシンギュラリティを引き起こす

皆さんご一緒に、XR 技術、業界を盛り上げて 2045 年まで到達する予測のシンギュラリティを引き起こす当事者になりませんか?

下記のビデオは、2017 年現在における「バーチャル対話」の実例です。近い将来、より自然に『現実に居ない人物と対話』したり、『実際には行くことのできない過去や未来の歴史的出来事を当事者として実体験』することが夢物語ではなくなるかもしれません。

そして、この未来を実現させるのは本記事をお読みいただいた あなた です。

アメリカのニューヨークにあるユダヤ歴史博物館で2017年9月から、ナチス時代のユダヤ人大量虐殺ホロコーストの生存者たちとデジタルで「バーチャル対話」ができる展示を行っている。

Pinchas Gutter氏はパネルを通じて20,000以上の質問に回答が可能。例えば「死の行進はどういうものだったの?」と尋ねると、音声を認識してパネルを通じて「囚人は2週間以上も歩かされて、半分しかテレジエンシュタットに到着できなかった。残りの囚人は途中の道路で殺されたか、死んでいった」とバーチャルに回答してくれる。他にもEva Schloss氏にアンネ・フランクについて尋ねると「アンネはとても賢い子だった」と回答する。

*1:ここでいうコミュニケーションは対話や会話を示すカンバセーションではありません